分かってないよ
榊 慧

「あそこのマクドナルド潰れろよと思うんだけど、」
「唐突だね。」
「ファストフードはみんな潰れたらいいよ。」
「嫌いだもんね。」
今夜はトーを誘って宅飲みでもいいからアルコール摂取しようと思っていた。トーはビール以外なら何でも飲む。つまみが無くてもいくらでも飲む。すぐ赤くなるが意識がもうろうとしたりとかはないらしい。
「トー、お酒飲まないかって誘いにきたんだけど」
「飲む」
トーは無類のアルコール好きだった。
「僕んちでもいい?」
「いいよ。行く途中にドラッグストアで買っていこう。」
トーはロディアのノートと水性インクのボールペン、財布(1342円しか入ってない)と薬を適当な鞄に入れる。
「あ、」
「何?トー。」
「なんか作っていこうか?それとも君んちで作ってあげた方がいい?」
俺の冷蔵庫、今、柿とモヤシと白菜しかないけど。トーは言った。
「普段なに食べてるのトー」
「いろんなもの」
「外食しないよね?」
「うん。」
柿持ってくわ、と、トーは柿を二つ僕に渡した。
桃か巨峰のカクテル飲みたい。早く飲みたい。課題できてないけどこんな夜に誘ってくれてありがとう。
「どうしたの?」
「悪い?」
「いや、」
「ごめん、電話だ、」
もしもし、あーはい、はい、いいですよ。トーは僕を見ずに話す。じゃーまた。はい。はい。ありがとうございます。パチン。
「ごめん、いこっか。」
「トー、今の人、」
「ああ知り合い。たまに連絡来るけど電話ないからびっくりした。」
「かまってよ。」
「あ、あ?」
あ。

「いなせだね夏をつれてきたひと、渚まで噂走るよメッ!」
「のりのりだね。」
「ラッツ&スター好きなんだよ。完璧に歌えないけど」
でもドラッグストアで歌うのはどうかと思うよ。
あのさー、なに?大学でなんかものすごい絡まれるんだけどさ、好意的な感じで。うん。でも俺は眼中にないわけよ。うん。
「あ、帰り泊ってっていい?そのまま明日行くから、」
「いいよ。」
「じゃーちょっとひかえめに」
「僕はビールでいいから。」
「おー」
でもさあ誘われたりして、断って一人で家にいると寂しいんだよ。うん。だからありがとう。っていう、
「俺は寂しいんだ。」
ぽつん。
トーはつぶやいた。
「寂しい夜なんだ毎晩。」


散文(批評随筆小説等) 分かってないよ Copyright 榊 慧 2011-11-08 15:33:29
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