系統樹
yuko

小さなころの記憶が
なくてそれは
当たり前のことだのに
問い詰めた先生は血を
責めてわたしはいたたまれない
まま自動ドアに挟まれた

が折り重なって
肥大していく樹

描いた


画面、
中央で指揮をする彼女は白と黒の衣装を着て
いる。音楽は高いところから低いところへと
順に流れ、ワルツを踊る人々は嘘の気配に気
付いている。緑のドレス、赤のドレス、孔雀
の羽…ことわりもなく侵入してきた指揮棒の
先が窓ガラスを割って、水面を流れていく長
い髪の白い(影に飲まれてしま う)
背景


わたしの
中のわたしが
喚き散らす
騒音に耐えかねて
母親の
首を絞めてしまう
再配列を繰り返して
けぶる家族のかたち
雨が降るきざはしを渡る
血痕

わたしは彼女を知らない
彼女もわたしを知らない


の奥(眠らない
べっ   (誰も、
とりと零れ出した(水面を覗かない
夜(詐称され、
箒星を呑み込んで(光る
胎内) 生まれた!
音楽 (血液、
(竪琴に、
磔にされたわたし)(つばさ、
の引き攣れたような
―すべてを    痕跡)
知っているかのように笑うのは



洪水、
の中心を流れていく髪はけして絡まらない。
人混みのなか逃げていくあなたは、夜の保護
色を知っていますか。彼女の黒い瞳の奥底に
見える白い爪を、幹をがりがりと削るその音
を。パニエを脱ぎ捨てる女たち。水流の根は
枯れ果てていて、日照りが続いて枯渇した湖
のことを知りませんでした(透明度の高い) 
貝殻


隣の部屋で黒い
虫が飛んでいると騒ぐ
きみに
臍の緒はないだろうと
先生は仰って
ねえ一緒に
鉢植えに花を植えませんか
きっときれいな花が
咲きますから
(わたしが組み変えた
名前なんて
初めからないのよ、


の匂い(血の、
彼女の (流れる、
まなざしは像を(群生する、
花々) 結ぶわたしと
焦点がずれている(second
dimention)壊れた
認知(なにも知らない…)
臨界する
いきものたちはみな
森の中で生まれたのです
断片が、(由来を
同定して)降って、
降って、降って(音楽は
終止線を、(生まれなかった、
待たない (変異体?
違う!(名前が
ない(彼女は、
春に降る雨のようで

「額縁、」
を越えて溢れ出した床
を見つめ続けそれ
は白くなり黒くなり容れものはひとつ
しかなくて
眼球が乾いてしまう
音の
氾濫(底面に繁る)
本当を(ごめん
なさい、)
知らない(高い、
彼女は  低い)
わたしじゃない森が、
(平面?)流れて
いこう
(半音だけあげる、)
「世界、」
自殺して

繋いだ指先は濡れている
球根に
齧りつく娘たち
(甘く、滴り、)
生きものの気配を縫って
しらしらと
梟が飛んでいく
わたしたちの血を吸って
繁殖したfamilyportrait
滲んでいった彼女たちの輪郭
充満する

影はなくみんなひとり
遊ぶ


自由詩 系統樹 Copyright yuko 2011-11-04 15:16:34
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