黒色の格子の中の人影の
空中分解

排水溝に水が流れていく

無関心なざわめきが街からきこえ

ぼくは窓の外を眺めている

通りを徘徊するばばあの持っている

乳母車の中身はしゃれた靴下が一足で

足音を消すには物足りない

だっだっだだだっだだだっだ

だっだっだだだっだだだっだ

燃えた車が部屋の中に停っている

これでこの冬は寒くはないだろう

ぼくは手を炎にかざし

ついでにばばあを放り込む

不参臭いしゃがれた声が中からきこえる

顔を近づけて黙れと言う

だっだっだだだっだだだっだ

だっだっだだだっだだだっだ

煙は街に充満し

息を吸おうとする人々は

ビルから次々と飛び降る

排水溝はつまったままで

水はもう流れこまない


自由詩 黒色の格子の中の人影の Copyright 空中分解 2011-11-03 17:55:34
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