夜 いなくなる夜
木立 悟




ひとつの指をひたし はじまる
どこまでか語らぬ夜の布
音の氷 青の氷
散らばる


片目の月 鉛の月
色のない筆に暴かれる
空は骨
空は骨


青のどこかに金があり
息もせぬまま生きている
石の壁 石の路
奈落のような曲がり角


袋から次々と
取り出される明日
きらびやかなものを
捨てる


夜の家と窓の家
はざまと震え たなびく灯
何も通らず
何もかもが通る


水と水の道
まだらつなぐ夜
進む音ふたつ
影を削る


会話の広場の脇道に立ち
銀河 オーロラ
ひとりの緑を
まとってゆく


夜は真昼
昼は白の白
描いても描いても
到かない白


何もかもが通り 何もかもが通り
そしてまた何も通らなくなる
崖を覆う片目の緑
静かに空を指さしている
























自由詩 夜 いなくなる夜 Copyright 木立 悟 2011-11-01 23:35:09
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