ボクのマスターベーション(2) オルフェーヴルについて
花形新次
というわけで、これから他愛もないことをつらつら書き連ねていこうと考えています。多くのことは、殆どの人にとって興味のないことになると思いますが、題名の通りですので、何卒ご容赦下さい。
さて、ボクは競馬が好きです。もう30年近く見ています。ダイシンボルガード以降のダービー馬の名前を順番に言うことができたりもします。(ダイシンボルガードで、早くも読むのを止めようとしているアナタ!それが正解です。)
まあ、そんなことは誰にでもできるので、自慢にもなりませんが。
それはさておき、そんな競馬好きにとって、今年は特別な年になりそうなのです。何故なら史上7頭目の3冠馬が誕生しそうだからです。
ここで3冠について簡単に説明すると、3冠というのは3歳馬だけが出走できる3つの大レース、皐月賞、日本ダービー、菊花賞を指します。(ちなみに3歳牝馬だけが参加できる牝馬3冠レースというのもあります。)
皐月賞とダービーは春に行われ、菊花賞は秋行われます。この3つのレースに優勝すると、3冠馬の称号が与えられるのです。先ほど言ったとおり、過去にはセントライト、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、ディープインパクトの6頭しかいません。
競馬好きでなくても、いずれも、どこかで聞いたことがある名前ではないでしょうか。その偉大な先輩たちと肩を並べるべく、今月23日日曜日に京都競馬場で行われる菊花賞で3冠に挑む一頭のサラブレットがいます。その名も「オルフェーヴル」。名前はフランス語で「金細工師」を意味します。これは、父馬の名「ステイゴールド」と母馬の名「オリエンタルアート」からの連想で付けられたのだと思いますが、その美しい栗毛と相まって、実にピタッとくるいい名前だと思います。そんなオルフェーヴルは、デビュー戦こそ快勝したものの、その後4連敗を喫し(ほとんどは惜敗なんですが)、他の3冠馬達に比べると、3冠に挑む前の戦績としては必ずしも順調なものとはいえませんでした。ところが3冠レースの第一弾皐月賞の前哨戦あたりから、ぐっと地力を発揮し始め、震災の影響で変則開催となった東京府中競馬場での皐月賞(例年は中山競馬場で開催)と雨中の日本ダービーをいずれも他の馬をまったく寄せ付けず、快勝したのです。その強さはかなり圧倒的なもので、順調に行けば3冠はまず間違いないと誰もが思う内容でした。こういう場合、競馬の世界では順調に行けばというのが枕詞のように使われます。サラブレットの体調維持は非常に難しく、特に春先に大レースで目一杯戦った馬が、日本の暑い夏を無事に過ごすことは極めて困難であると言われています。2冠は達成したものの、夏を上手く過ごせず、菊花賞に出走することすら出来なかった馬さえいました。3冠馬の6頭もなんとか菊花賞に出走し、3冠馬になりましたが、必ずしも順調に夏を越した馬ばかりではありませんでした。一方オルフェーヴルはというと、これが頗る順調に夏を過ごしたようで、秋初戦の神戸新聞杯(菊花賞のトライアルレース)は鞭も使わないで圧勝してしまいました。負かした相手も、最大のライバルでダービー二着馬のウインバリアシオンや、3冠馬ディープインパクトの息子でそれまで無敗のフレールジャックなどで、それ以外に新たに前に立ちはだかるような馬も見当たらないことから、オルフェーヴルの3冠達成の可能性はますます高まるばかりです。ボクも既に今からワクワク興奮していて、日曜日が待ち遠しい状態なんですが・・・・・
ボクは美しくどこか孤独な影のあるオルフェーヴルがとても好きです。できれば3冠馬になって欲しいと思います。
でも、なんとなく「ちょっと違うよな。」という気もしています。何が違うのかはっきりとは言えないのだけれど。
過去の3冠馬達はとてもメジャーな、王道を行くような雰囲気を3冠馬になる前から備えていました。オルフェーヴルはというと、王道というより、・・・路地裏が似合いそうな、血統的にも一流なんですよ、でもやっぱり路地裏で口笛を吹いているのがとても似合いそうな感じで、3冠馬のような威厳のあるというか、権威的なというか、そんな称号は似合わないなと思っています。
素直に言うと、心のどこかで負けることを望んでいるのかも知れません。競馬好きの複雑で歪んだ愛情とでも言いましょうか。
「小さな誠意」
競馬は好きだが
馬券は買わない
どうせ儲けたくなって
好きでもない馬も
買ってしまうに決まってる
いつまでも
好きな馬だけを
見ていたい
だから馬券は買わない
それが
僕のほんの小さな誠意
ボクは、今回はオルフェーヴルの単勝馬券だけを参加料として購入し、それを握り締めてレースを見ようと思っています。
オルフェーヴルが勝っても負けても、ちょっぴり寂しい気分を味わうために。