花を連れて
草野春心



  川沿いを
  髪のながい
  女が一人
  頭骨によく似た
  薄赤い花を
  五つ
  のせて
  乳母車を押してゆく
  女がひとり


  *


  (さらさら
  (さらり
  (さらさら
  (さらり

  なつかしい譜面を
  結末から遡る
  女がひとり

  (さらさら
  (さらり

  女であることを
  川面に
  静かに投げいれてゆく
  なにものかが、
  ひとり

  (さらさら
  (さらり
  (さらさら
  (さらり


  *


  この視線は
  やがて
  見喪うことを
  おそれるものとしての
  とうめいな
  睾丸となって

  (あの身体で

  ひとりのひとが
  手放してゆく花を

  (その身体で

  みずからの
  ただひとつの影が
  いのちをかけて
  慈しんだ花を

  (この身体で

  僕は
  いつまでも
  追って
  辿り着くこともなく
  この身体で





自由詩 花を連れて Copyright 草野春心 2011-10-17 19:30:23
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