封筒を買いに
草野春心



  封筒を買いに行く
  各駅で二駅
  なにもない街に
  とうめいな街に



  封筒を買いに
  最近の僕らは
  いたずらに言葉をついやし
  いたずらに歩きまわり
  煙草ばかりが増え
  食欲をうしない
  よくない風邪をひき
  最近の僕らは
  なにもない街に
  とうめいな街に
  ぷかり
  ぷかり
  浮かんでいるばかり



  封筒を買いに
  なにか忘れてる
  そんな気がする
  洗剤が切れている?
  蛍光ペンの赤がない?
  なにを忘れてる
  新しい靴?
  だれかの葬式に
  着て行くための黒い服?
  なにを、僕は
  忘れてる?



  明日も
  明後日も
  封筒を買いに
  なにもない街に
  とうめいな街に
  ちらばっている影
  それは夢
  それは誇らしさ
  それは、とても大きな
  とても大きかったもの
  それは僕
  それは君
  それは、僕たちの
  あいまいな重み
  それは夢
  それは
  夢
  明日も
  明後日も
  封筒を買い
  その一枚に、僕は
  なにを詰める
  なにを託す
  なにを、僕は
  一杯にできる?



  うん、
  ねえ、
  君のこと、
  心から愛してた。
  嘘じゃない、
  マジだって。
  でも、
  結局さ、
  僕が悪かったって。
  君は一体、
  どこに居んだって?
  だからさ、
  いや、
  うん、
  あのさ





自由詩 封筒を買いに Copyright 草野春心 2011-10-12 19:24:42
notebook Home 戻る  過去 未来