ありふれた言葉
さすらいのまーつん

ありふれた言葉が好きだ
使い慣れた工具のように
なんだって 作れるから

人を切り裂くような刃も、包み込むような温もりも、
言葉の鉱石を鍛え 糸を縫い合わせて
この手に 携えることが出来る

若い詩人は ワクワクしながら 己の内側を旅する
思いがけないような煌めきが 自分の中に見つかる
優しさ 残酷さ 勇気 逸脱
両腕一杯に 抱えた宝石を
彼は白い紙の上に 撒き散らす
さあ見てくれ これが私だと叫びながら

老いた詩人は 杖をつきながら 己の内側を旅する
通いなれた小径に 見慣れぬ花が咲いてはいまいか そう期待して
優しさ 残酷さ 洞察 教え
彼は紙を取り出して また一枚 生きた証を重ねていく
忘れないでくれ これが私という人間だったと 呟きながら 
 
ありふれた言葉が好きだ
その刃先をハサミの様に世界に差し入れて
詩人は思うがままに 切り絵細工を作る

言葉 この偉大な道具


自由詩 ありふれた言葉 Copyright さすらいのまーつん 2011-10-03 19:41:28
notebook Home 戻る