低気圧
アラガイs


…遠くに霞む、なだらかな峰を映しながら停車した
彼方と此方では空気の層が違う
人々は起伏のない平野ばかりを気にして
なにやら煙から臭気が近寄ってくる
斜めに閉じ込めた景色が追いついてきて、胸をつつく…表示が点る…………化石燃料が飛び交う…重力の
朝を、告げる、静寂の鐘が
堕ち、油にまみれた青い毛の…
の、霧状に散らばる背骨に
威嚇する、やわらかな蹄とチタンの心臓で、失望
と、「ひとり」少女を残して
闇は、、触媒を飲み込んだ…
…世界はガスで満たされ
夜を発射する、切り裂く波の
揮発した、色無作為に
、低い雲の下で途絶え
無限と回路にぶつかりあう、光は針金のように固い
重力が暴走する
…不在に真空な夜………と、なにやら霞む
月に残る足跡も
海溝を湧き出る圧力にじっと耐えている…尾根の枝も…「表示が……薄く…混乱している…… ……何処にいても朝は冷たい
…風が雨粒を誘う
空気が重く街にのしかかる
いつのまにか周りはにぎやかな色で埋めつくされていて、少し息が苦しい
マフラーが細い巻き毛な絡まり、女の子は窓際に張り付いた
こつん、こつん、硝子を叩きながら老夫婦が笑顔で手をふっている
わずか三百?足らずの速度でも時間にすれば半日とはかからない
また会えるときには月もその姿をかえて
波と時間とが引き寄せあう空白な日になるかもしれないと…
…紙コップの熱い珈琲がステントを突き抜けて胸に凍みてくる
見送っていた母親が遠慮がちに腰をおろすと、足をずらして遠くを眺めた
赤い毛のマフラーは少女には暑すぎた

季節を通りすぎる風は酸味だけを残し
闇に輝く青い毛をなびかせて稜線を駆けてゆく……あの白い雲のなか富士の頂きに登ってみたい……
…鋼色の学生服を気取るころ
何故か咄嗟に見知らぬ女学生の手を引いた
五合目の写真を遺したまま、曇り空をみつめるわたしがいる



… 。




自由詩 低気圧 Copyright アラガイs 2011-10-02 02:50:09
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