四季
かぐら

淡雪の止みたるのちに会えたことなんども傘を振ってよろこぶ

漆黒の庭にさらさらとき充ちて空の底よりこぼれる花弁

ざわざわと嵐のなかの花となり座りこんでは夕景を観る


山萌えて取り残された心地して立原道造詩集をひらく

青草の苦味の中でふたりしてぶらぶら脚を揺らしていたり

あかあかと金魚ひとみの中泳ぎ胸に達するころには眠る


きのふまでかをりし花はきみの去るつめたき昼の傍にありけり

なぐさめは秋の小路に落ちておりふるえつつなお立ち尽くすのみ

黒髪の匂りの中に充たされていたこともいま木枯らしの先


秋のその名残りのために早起きしつないだ指をゆっくりはなす

はかなき肌へとそっと手をあずけ白樺揺れるように静かに

夕闇に白い地平はなかりけり目を閉じてきく枯草の波




短歌 四季 Copyright かぐら 2011-10-01 21:35:19
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