凍った麦茶
Yuuki
氷の塊となった麦茶を
24度の室内でゆっくりと溶かしていく。
一滴一滴の水滴が、
麦茶の表面を伝わり落ちて、
冷たい水の姿に戻っていく。
一つの滴が氷を伝うたびに
静かな部屋の中で、
風鈴がチリンと音を鳴らす。
ゆっくりと時間が流れていく中で、
一滴ずつ氷は元の姿に戻っていく。
それは夏のことだった。
子供の怪獣が氷を見つけた。
ゆっくり、ゆっくりと、
だんだん早く近づいてくる足音。
乾いていた怪獣は、
ぎろりとした目を氷にむけ、
大きな口をあけて、氷を喉の奥に滑り込ませた。
僕は氷のなくなってしまったテーブルの上を見ていた。
子供の怪獣はどこかに消えてしまっていた。
凍った麦茶も子供の怪獣の腹の中で、
静かにどこかに消えてしまった。
それは秋のことだった。