殺風景
花キリン


殺人事件があったが誰も騒がない
明日になれば忘れることができるし
隣の家の事件でも
こんばんわと挨拶するほどの仲でもないからと
テレビのニュースも素通りするだけだ

何のことはない
他人は全くの他人で
クレージーな時間はあまりにも多すぎるから
付き合いはごめん被りたいと
切って捨てるように言い放つ

座る椅子も
この頃は殺人鬼のように見える
隣人を愛せよとは誰が言ったのか
きりきりと眩暈がするようなことばかりで
封印された痛み止めなどは
たわ言に過ぎない

殺人事件があっても
他人事で日常を通り過ぎてきたから
これもその延長ですと顔色一つ変わらない
ご愁傷様とは言葉だけで
カップラーメンの時間を気にしている

それでも身だしなみと
朝の挨拶だけは忘れたことがない
住宅もごみも台所も
みんな一緒の集合住宅だから
にこりと笑っておかず一品を手にすることができるなら
偽善の挨拶の一つや二つは

味わうことの少ない
できの悪い話ばかりが並んでいる
クレージーな時間が多すぎて
どことなく噂話のように干乾びている
するりと通り抜けられる路地裏の
立ち話みたいだと
諦めてはいるのだが




自由詩 殺風景 Copyright 花キリン 2011-09-25 09:35:21
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