ニラのにおい
はだいろ

夜ごはんは、
コンビニで、ニラ95円を買って、
玉子がふたつあったので、
ニラ玉。
ご飯をたいて。

へやの中は、
いま、
ニラのにおいが充満している。
充満しているなかを、
昨日買った、
ニック・ロウの45回転レコードが流れている。

若い頃、へやでごろごろしていて、
社会のしくみが、何もわからないような気がしたけれど、
会社に勤めて、
もう十何年になるのに、
あのころより、
今のほうが、
ずっとずっと、
世間知らずになっているような気がする。

何もせず、
音楽ばかり聞いていた。
あのころ、
だけど、
こころのなかは、
もっと世界とつながっていたように思う。
戦争や、平和について、
真剣に考える事ができた。
答えはなくても。

だから、社会人なんてことば、
実にいい加減なものだ。
寝転がっているだけの若者のほうが、
よっぽど社会人なことだってある。
好きな音楽だけが、
ずっと、
変わらない、
そしてお金がなければニラ玉だ。

栄養はこころとからだに、
染み渡る。
何も変わりはしないさ、
そのことだけで、
ぼくは、じぶんのことを、
まだ信じることができるのだ。






自由詩 ニラのにおい Copyright はだいろ 2011-09-20 20:46:36
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