匂い
ヨルノテガム







 ムーンライトは首を傾げ
 夢見る素振りの、ああ、や、いい
 や、うう、などを零した
 静寂には幽霊は溢れ そこから見渡すかぎり
 幾つかの季節を駆け回って眠った
 
 雨はやさしく外郭ををなぞる
 身を持ち崩した雲の遊びや
 声の出ない忘れられた微笑の一度きりを
 彫像みたく取り寄せ掴んだ

 指の弾く願いの色音の、
 虚実のうわさを
 とぼける健康体の
 爪先から逃げゆく
 隠れ失せた命の綾を
 海へ山へと
 飛行してゆくわ、の風の性質。

 扇風機の流れる
 年月の循環から
 約15年の待ち合わせを割り出し、
 いやらしく猥雑に交わる、接点や分岐点に訪れる

 花の名まえが マンコー だったり
 オチムポーン だったりすれば
 花びら占いをする乙女に
 目一杯の花束を。
 秘密に埋もれた箱部屋の
 両扉の丁度あいだにあるテーブルの上へ

 照れたり
 笑ったり、
 あなたは半分 隠れたりして。
 花に浮かぶ
 その箱部屋を神に捧ぐ










 


自由詩 匂い Copyright ヨルノテガム 2011-09-20 05:41:38
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