正しい月
唐草フウ

目を覚まして こすり合わせる
貧弱なものたちの強い毎日
そんなあなたに ごほうびです 

満月が二つ出た
願ってもいないことだったが
ひとつは自分用に
大きなポイで掬った
知り合いの子はタモの方がいいんじゃない、と呈したが
それだと網目から漏れ出てゆく気がしたので


そっと 左手で持っている湿った手拭いを広げ
包んでおいた

もう片方の満月は空に置いとくことにした
でもそのままだとヘッドフォンの片割れをなくしたときのよう  
つまらなそうになられちゃこまる
油の涙だか汁だかを落として
おかげで艶やかな色彩は出せたので
従来通りの名月のままだ

包んだもう一つの満月を
悩んでいる友人に届けようと思った
水晶とか神がかったものとかいうし、巷ではパワーストーンってものがあるから
そのひとつだよ、といいたかった
言って軽く渡したかった

光はさほど発しておらず
現実と夜のはざまで宙に浮くわたしは
この包みの中が せめてもの
命の卵だったら と
ひとりそっと願ってみていた










自由詩 正しい月 Copyright 唐草フウ 2011-09-14 07:12:20
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