正しい月
唐草フウ
目を覚まして こすり合わせる
貧弱なものたちの強い毎日
そんなあなたに ごほうびです
と
満月が二つ出た
願ってもいないことだったが
ひとつは自分用に
大きなポイで掬った
知り合いの子はタモの方がいいんじゃない、と呈したが
それだと網目から漏れ出てゆく気がしたので
そっと 左手で持っている湿った手拭いを広げ
包んでおいた
もう片方の満月は空に置いとくことにした
でもそのままだとヘッドフォンの片割れをなくしたときのよう
つまらなそうになられちゃこまる
油の涙だか汁だかを落として
おかげで艶やかな色彩は出せたので
従来通りの名月のままだ
包んだもう一つの満月を
悩んでいる友人に届けようと思った
水晶とか神がかったものとかいうし、巷ではパワーストーンってものがあるから
そのひとつだよ、といいたかった
言って軽く渡したかった
光はさほど発しておらず
現実と夜のはざまで宙に浮くわたしは
この包みの中が せめてもの
命の卵だったら と
ひとりそっと願ってみていた