10 Years
綾瀬たかし

 
 
 
【10 Years】
 
 
 
 人は想像を超えるほどの悲しみを目の当たりにしたとき
 本当の意味での絶望を知る

 あれからもう十年という長い月日が経ったというのに
 あの日の事を今でも夢に見るほど鮮明に憶えているのは
 誰もが決して忘れてはならない事実だから

 季節は変わり
 時代が変わり
 景色も変わってしまったけれど
 あなたの笑顔だけは私の心に変わらずにある
 
 石碑に刻まれたあなたの名前を指でなぞると
 あの日と同じ胸の苦しみと同じ色の涙があふれる
 愛していたからこそ
 まだ愛しているからこそ
 この胸は堪えきれないほどの苦しみに締めつけられる

 あの日から
 寝る前には必ず祈りを捧げるの
 あなたが受けた苦痛が少しでも安らげますようにと
 目覚めには残された写真に口づけするの
 今日もあなたが空から私を見守ってくれますようにと
 
 このままずっと
 あの日のことがまるで嘘だったような
 そんな平和な日々が続いたとしたら
 いつか私の心の傷は癒えて
 今日という日を笑って迎えることが出来るかもしれない
 けれど
 あなたを愛していたこと
 それはきっと変わらない
 
 あなたと
 あなたと同じ苦痛を受けたすべての人々が
 遠い空の彼方からいつまでも私たちを見守り続け
 いつかきっと世界を真の平和にしてくれますように
 
 
 


自由詩 10 Years Copyright 綾瀬たかし 2011-09-14 01:22:11
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