ノート(庭と風)
木立 悟





手紙の花
咲いては咲き
見えなくなる
花の花のなか


山すその音
読めない文字の
背を伝う音
すぐに 冬が来る


蒼に臥したまま
朝が来ていた
盲目の昼の指
髪に触れ 髪に触れ


曇のまばたき
同じ音が三つ
雨の残した水を走る
片目をおさえるふたつの手


わたしがずっと見つめている目は
わたしを少しも見ることはない
わたしは空に点滅する
わたしは水に映り 踏まれる


岩や霧からけだものは生まれ
羽を得ずとも飛び去ってゆく
けだものを裂いて生まれるけだもの
羽が生えても飛べないけだもの


午後から午後へ
午後はわたる
訊くものはない
夜のことなど


雨の肩が
蜘蛛を逃がす
遠くへ
冬より遠くへ


枯葉や雪のまぼろしが
家を家に捨ててゆく
中庭に立つ小さな目
語る花に触れてゆく





























自由詩 ノート(庭と風) Copyright 木立 悟 2011-09-12 00:38:47
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