渇いた氷
木屋 亞万
庭にドライアイスを吐き捨てた
僕の肺の底に溜まっていた汚物
吐き出せなかった二酸化炭素が肺に堆積して
静かに冷えて凍ったもの
空気を吸うのと同じだけ
吐き出すことが出来ればいいのに
いつも息が詰まってしまって
少しずつ息苦しくなっていく
夏の熱気と湿気の中で
庭の雑草は狂ったように成長している
僕の手足はするすると細くなる
ぽっこりとお腹だけが出てくる
ドライアイスは夏の庭で
忌々しそうに煙を吐く
縦横無尽に生い茂る雑草の上で
気だるそうに寝そべりながら
お前の中に堆積した
吐き出せずに
我慢したものどもが
いつの日にか
お前の見えないところから
ぼろぼろと零れ落ちて
お前の醜態をさらすだろう
と
ドライアイスは言った
僕の耳はもう自分の内側の声しか拾わない
僕の口は元々言葉を受け入れるようには出来ていない
だからあなたのくちづけを待っている
あなたが僕の口から渇いた氷を吸いだして
僕を目覚めさせてくれるのを待ってる
僕はもう
ずっと
庭で
倒れたまま
あなたを呼んでいる