夕暮れ王国
未有花

夕暮れには不思議な魔力があって
どういうわけかふいに門が開かれて
僕の王国に淋しい旅人を連れて来るんだ

旅人はしばらくは荘厳な夕日に見惚れているが
我に返ると皆決まって故郷に帰りたがる
だけど王国の門が開かれるのは気紛れで
それは明日のことかもしれないし
何年かあるいは何十年先になるかわからない

いつまで待っても開かれることのない門に
最初はチャンスを窺っていた旅人も
やがて帰ることも忘れて
ここで延々と沈むことのない夕日を眺めることになるのさ

僕もいつからここにいるのか忘れてしまったよ
もしかしたらみんなと同じように
僕も向こう側から来たのかもしれないね

こうやってあの地平線をみつめていると
そんなことどうだっていいように思えて来るから不思議さ
何もかも忘れて心を空っぽにしたまま
夕暮れにひとり佇んでいれば
それだけで胸がいっぱいになってしまうんだ

淋しいような懐かしいような
そんな気持ちに捕われて
僕はずっとここで夕日を眺めているのかもしれないね

ここは夕暮れ王国
いつまでも日の沈むことのない国
いつか君にも幸運があったなら
僕の王国にやって来るといい
僕はいつでもここで君を待っているからさ


自由詩 夕暮れ王国 Copyright 未有花 2011-09-02 09:04:29
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