ボタンを押したら
木屋 亞万

君はポロシャツを着ている
襟のところから三つボタンがあって
君は一番下しか留めていない

君はだぼっとしたジーンズを履いていて
その膨らみの中にまだ春を隠していた
もうすぐ夏も逃げ込んでくる

君と僕の間には四角い木のテーブルがあって
アイスコーヒーのグラスが汗をかいている
薄着の僕らにはこの店はすこし寒く思える

君はさっきから何かを話している
趣味に仕事に人間関係
僕はそれをほとんど聞いていない

ただ君の胸のボタンを見ている
ポロシャツの上から三つ目のボタンを見ている
指をついっと出してそのボタンを押したい

もしも僕がそのボタンを押したら
君はどうするだろう
春は君のズボンから逃げ出すかもしれない

もしそのボタンを外したら
グラスはもっと汗をかくかもしれないし
楽しかった夏はいよいよ終わってしまうかもしれない


自由詩 ボタンを押したら Copyright 木屋 亞万 2011-08-31 12:13:20
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