ノート(紙ひるがえる紙)
木立 悟





冬は冬に臥せ
川を見る
灰のうしろ足に咲く
花を見る


滴を追いかける
滴の靴
一閃の
緑の爪


光は光を踏みしめる
氷の上に燃える青
海へ海へむかう道
羽ばかり羽ばかり打ち寄せる


午後は午後を避け
降る油に目を閉じた
見知らぬ親が幾人も
耳やうなじを抱きに来ていた


冬や鉄や冬や鉄
森のなかの 原の息つぎ
次の空へ
鳴くための


午後の風に
森の上に
椅子は燃えて
一面の青をさえぎっている


こめかみの空
こめかみの星
数える指からかがやいて
見たいと願うほど見えなくなる


岩の道を描く熱の笛
地の花
地の鳥に捧げた水が
誰もいない昼を分けてゆく


冬は居るのに
冬は虚ろ
冬の紙を折る指ばかり
にぎやかににぎやかににぎやかに笑む






























自由詩 ノート(紙ひるがえる紙) Copyright 木立 悟 2011-08-30 22:58:56
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