朝デニーズ
salco

カウンターでモーニングを
こうして毎日摂れるのは
四十年間働き続けたおかげ
払って来た厚生年金の余禄
震える指で煙草をつまみ、吸い
灰皿に戻して
まったりの店内を吹き抜けるウェイトレスが
半紙のように置いて行った盆に向かう
シミの浮いた禿げあたま
補聴器を右耳に
ガタの来た脊椎を屈めて
震える指で割箸を出し、持ち
飯粒をぼろぼろ、半熟の黄身をこぼして運ぶ
この五月で八十になった

年金支給開始日と違い
ばあさんの方が先立った青天の霹靂
昼はコンビニのパンか握り飯
皿一枚、洗った事がない
夕方には給食が届く
ちんまりと仕切りに収まった
味気なさだけ食っている
まだ食わねばならないのだ
三度三度
いつまでとも知らされず
一日を
誰とも話さない
誰とも逢えず


自由詩 朝デニーズ Copyright salco 2011-08-29 23:20:10
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