火打ち石
るるりら

この詩を読もうとしてくだっているかたに はじめに 申し上げておきます。
この詩には 少女の自殺がモチーフとして 扱われております。
そのような内容のものは、精神的に負担がかかるという自覚のある方は
お読みにならないことをお勧めいたします。

題【火打ち石】


「嵐って好き?」
昨日の 海に落ちていった 稲妻を心配しているのかと思ったら
歌手の 嵐のことだね よその学校の 話は おもしろいな
女の子どうしで みんなで 踊りをおぼえて
嵐のメンバーの名前で お互いを呼び合う
男の名前で 呼び合うなんて ばっかじゃない 意味わかんない ってね
なんか嬉しそう


無人島に来た 
ほかの連中は 探検だとか言って 入り江の向こうの
叩き合わせると 火花が立つという透明な石が ぴかぴかしててメノウになってる場所を探しに行った
じゃけど、 体調の良くなかった  わたしら ふたりだけが ほんとうの無人島に近い。わたしら 二人だけの 無人島というか 二人島じゃっ。

島を独占したら
さざなみが
そらが 
遠くの一直線のほうで おいで おいでをしている
大海原を こぎだしてしまいたい
波の言葉は いつも はげもうとしている たゆまず すすめ
過去を悔やむな
たちあがったなら そのまま すすめだ 水平線がまっすぐなように 
たぶんね 波の言いたいことは 日本語のすべてを 無駄にするような
そんなふうな 一直線だ

一直線を はるかに見ながら
わたしらは 石英とかいう石を 集めた
わたしらは 火打ち石とかいう石を集めた
石英は火打石なんだそうじゃ
  

このキャンプにきて
わたしの隣に座ってくれた女の子は
ぽちゃっとしてて お目も まるくて きょとんと してて
わたしは この子で この子は わたしなんじゃあいかと思った
理由は 可愛い人じやったから

「ともだちがね じさつしたんだよ
 それがね 明るい子でね」 そんなことを 言い出したんわ それって
 どうなん?

その亡くなった子には 生まれたばかりの兄弟ができたばかりで
その子は 母さんに 二階のベットに その赤ん坊をつれてゆくように言われて、そんで その子を二階に連れて行ったんじゃと
でも なかなか二階からなかなか その子が降りてこなかったので
母さんは 不思議に思って二階にあがると 二段ベットの隅に紐をつるしてその先に 遺書もなく その子が居たそうなんだ
「え゛ーーーーーーーーーーーーー」わたしは、海の遠くに聞こえるように叫んだ。話をしてくれた 友達もさけんだ
「え゛ーーーーーーーーーーーーー」でしょ
 その子の その時の数時間前に その子の笑い声を聞いたらしい
 だれも 理由が解らないらしい 
 十三歳が聞いた 出棺のときを知らせる ピーって 音
 それは 本当の音じゃった

他の子は みんな 沖なんだから
ふたりだけの無人島で いままでに出したことのない大声を出した。
「え゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
叫んで叫んで叫んで 叫んで
でも 叫んで
わたしは、ただただ きよらかな だれかさん に
あなたは、あなたが思う以上に愛されているよ。って思いを
「え゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」に込めたんだ。

そのうち 青かった空の色が どんと重くなり
太陽の大きな朱色のせいで 青い空よりも安心できた
おひさまの まるさに
沈まないでほしいと 祈った
おひさまは まっすぐな 水平線の まんなかで
わたしと目線を あわせて ただただ じっと そこにいてくれた
あれは すごい 真っ赤な 夕日じゃった 


それからね
無人島からね 帰ってきてからね
でも まだ あの 沈んでゆくおひさまの視線を ね
朝になると のぼってゆく おひさまの視線を ね
思うんじゃ

夕日と朝日の ふたつの火花をさあ
あの子と私の ふたつの火花をさあ
思い だす ん じあ


     あ 今 さあ 
     きな臭いな







眠れない夜
うちんちの台所で あの島の石を叩いたらさ
ゆびさきほどの きな臭さ だよ
なんか 海が ドクドクしてくる




自由詩 火打ち石 Copyright るるりら 2011-08-24 09:52:40
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