泥をぬる
blue

こんな部屋の空気でも
胸いっぱい吸いこんだら
涙をとめるくらいにはなったようで

あんなに泣きたかったのに
涙の な の字も出やしない

我慢しなければならないことが
次から次へとあふれてくるから

カナブンが窓ガラスに体当たりするのを数えたり
通りがかりの人にうなじを見せたり
そんなことをしながら
私は心を堅くする

世の中には
どうでもいいことと
どうでもよくないこととが
それぞれ同じだけあって
これは
どうでもよくないことと
判断するのは
やっぱり私のここの部分であるのに

だから手は繋いじゃだめだって
言ったじゃないかという忠告が
誰のものだったのか
もうすっかり忘れてしまって
私はそんな自分自身に泥を塗ることになる

あの夏
あの夜
あの人
あの恋

ああ そうだ
もうそんな言葉で片付けるのは
やめよう
新聞にだってそう書いていたじゃないか

あやふやな心に支配されるのは
もうやめよう
半流動的な言葉に支配されるのは
もうやめよう 
これ以上
私自身に泥を塗らないために


自由詩 泥をぬる Copyright blue 2011-08-17 21:41:55
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