夏の実
砂木


カラのコップに残る
冷ました 後の氷

気体になって 闇になり
朝方から 光に変わっていく

眼から光は入り
指先から 出ては
小さな声で笑う

寝癖で まとまらない髪の中
つぶやく かれんぼの押し殺した声

朝焼けと蜂蜜をまぶした手のひら
耳たぶから 頬を撫でる

赤味が薄くさした宵口に
甘い匂いの月が満ち

がりっと かじった
皮のめくれた 桃が露と
したたりながら
唇を

コップに残る ひとしずくは
なまぬるい眼






自由詩 夏の実 Copyright 砂木 2011-08-15 08:43:16
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