隠居
……とある蛙

中空に浮かんだ茶室
山の麓の回廊から眺む
山門をくぐった時から降り始めた
しぐれ雨
下界と山荘の次元を断ち切る結界のような様に
主人は爬虫類のような横顔を魅せ
染みと皺だらけの表情は
客を招いて機嫌が良いのか悪いのか
世間の嘆き苦しみ悲しみが
雨に流されしとしとと
堆積された世間の嘆き苦しみ悲しみを
掃除することも無く何処へと投棄放棄
清潔な空間に身を置く華族の末裔
戦国時代の優雅な強盗の一族
天変地異すら見ていないこの華族
奇怪なことに
微動だにしないその心情
その生活、その世界観

所詮世間とまじわらず、

落下する希望と
受け止める気のない失望と
曇りガラスに透けて見えるこの茶室
天空に輝く


自由詩 隠居 Copyright ……とある蛙 2011-08-14 15:21:27
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