キリストは必ず来る
blue

いつの間にか
背中の子どもは静かな寝息をたてていた
スーパーのレジ袋を下におろし
あたしは 一体どのくらいそうしていただろう

電柱には 黒い紙に 金色のマジックで
『キリストは必ず来る』 
と書かれた紙が貼られていた

後ろで乱暴に車を停めて 
若い男が運転席から降りてきた
ガムを噛みながら 
賃貸住宅のチラシを
電柱に器用に張り付けている
そうしながら
男はあたしを見ているようだったけど
あたしは 相変わらず
その黒い紙を食い入るように見つめていた

キリストが必ず来るなら
あたしは 悪魔になってもいいのかもしれない
悪魔になってもいいと
誰かが言ってくれているような気がした

差し込むように
乳房が張ってきて
あたしに時間を知らせる
昨夜 殴られた拍子に
タンスの角で打ちつけた肩に
子の重さが食い込み
あたしは少し足早になった

電話工事中の 看板の先には
「酸素欠乏危険場所」 と
仰々しく書かれた囲い
警備員が
気をつけてどうぞ と
あたしに声をかける

こんなあたしに優しくするのか
ちゃんちゃらおかしいと
あたしはもっと足早になる

部屋に着いたら
背中の子をおろして
乳をやろう
悪魔になるのは 
それからでも遅くはないはずだ


自由詩 キリストは必ず来る Copyright blue 2011-08-09 21:51:02
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