失われた二十年
ゆえづ
安っぽいネオンに浮き上がる壁のシミ、年食った売女のためらい傷にデカダンスすら感じながら、油臭い路地裏につっぷした浮浪者の踵、また、その頬に刻まれた皺、それらの造形美に酔うことだって平気で、若い君は強かった。
私はまだあおっちろく、陽の当たらないところに棲息する腐生植物のように透けていたから、自然がすべからく美しくあるのと同様に、正しかった事実だけを受け容れれば良かった。
ありふれた悲劇を声高に訴える同僚は絶えず躁状態で辟易する。
なんてことない人生をそれなりに生きる。人を許せ。君が学んできたものなんて電柱で剥がれかかったピンクチラシほどの価値もない。