雲の立つ
yumekyo

平成23年8月6日 
旧暦の七夕イベントでにぎわう鴨川
視界を遮る北辺の山々の
はるか上空まで入道雲が立った
3本ほど 並んで立った

昭和20年8月6日
「今日も暑いのぉ」と言葉を交わしながら
広島へと向かう土くれの道をリヤカー引いて歩く農家のオッサンの
見上げるはるか上空まできのこ雲が立った
髑髏の様な 雲が立った

広島のはるか上空に立つ髑髏のような雲は
呉軍港に居たある海軍主計大尉の目にもはっきりと見通せた
彼はその雲を見た瞬間暗闇の中で不意にドアが開いた音を聞いたという
後に彼は政治家となり日本最初の原子力予算を国会で通し
最終的には首相まで上り詰める
原発推進は安全保障政策だったらしい
中東に偏在する原油を日本まで輸送するに当たっては
カムラン湾という大きな障害があったのだが
原発の燃料であるウランはカナダやオーストラリアから入手できるから
シーレーンを脅かされる可能性は比較的少ないのである

過日 京都や滋賀の市民が福井の原発の運転再開差し止めを求めた
若狭の原発銀座から京都や滋賀は近く影響をもろに受ける
もし最悪の事態が起こったとすれば
視界を遮る北辺の山のはるか上空に
髑髏のような雲が何本も立つことになるのだと
彼らは言う

平成23年8月6日
僕はエアコンを入れステレオで音楽を流しながら
PCで恐怖の御伽噺を綴っている
ちなみに関西電力の原発依存率は現在でも5割以上である


自由詩 雲の立つ Copyright yumekyo 2011-08-07 10:05:52
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