夜景・死に水
ピッピ

「どこにいる?」
誰のしわざだろう

  (どこにいる?)

有限のたましい


絶対音感の人の指先が
たくさんのたましいの呻りで
にごってゆく
そのとわの中で
その
  とわの中で

いきつく先を


それはメビウスじゃなくて
クラインっていうんだよ、
と、
空を指しながら
もともと、形があったもの
そしてかなしく
うたうもの

ぱちん、と。


くるって、くるって、
飛び立っていくね、
くぐもて、くぐもって。
失敗、したかな…?
  風が強いもんね。

大切なものをつめこめたかな、

「手は、つなげないよ?」


長いクラクション、
スピード違反の自転、
歯車の外れた人生、
この世のあちこちに
落としてきてしまった、
ねじや部品のそれぞれを、
一つ一つ拾い集めて、
誰のきおくにも、
残らないように、
すこしずつ、
すこしずつ、
透明になっていく。


夜空。

ストーリーで空が埋まる。
彼らに救いはない。
無人のトロリーバス。
吐瀉物のにおい。
絶望するのに充分な、
わずかな希望。


自由詩 夜景・死に水 Copyright ピッピ 2011-08-04 22:53:21
notebook Home 戻る  過去 未来