スケジュール
葉leaf

5時 起床
 死んだ爪の凝縮の演技。来るべき一日の水溶性を測る。サボテンの正義を分解して蒸気機関の犯罪を合成する。いくつかの爆発を引き出しの中にしまい込む。輪郭が許可される。許可を輪郭する。騒ぎ立てる仏像の内部に散らばる眼と眼と眼。

6時 朝食
 歯の中の歯が歯を砕いて外に出る。日差しを垂直に立てて、そこに巻きつく。穴の中を落ちて行くいくつかの前立腺。トマト。飯の類。箸の代わりに議論を用いる。水平線を縦に引き伸ばして石の脳にする。

7時 爆笑
 実を落とす。影を闇にまで高める。斜線だらけの口から腹の運動がはみ出る。血を集める。星を呼吸する。神を訴追して刑を執行する。色彩が許可される。許可が色彩する。降り積もる空間の薄片。

11時 爆笑
 双葉になる。歴史を培養して空気中にばらまく。歴史に感染する。右手が増えて困る。左手が減って喜ぶ。脳が体中を駆け巡る。断続的な音が皮膚に溜まる。物質を強姦する。物質を歌い、揺れる明かりを失くしてしまう。

12時 昼食
 感情の起伏を地図で表す。食欲が皿で反射して、食物に変わる。皿を透過した食欲が、テーブルに「今」の粒を埋め込む。東に救われる。北にけなされる。血管が骨を締めつける。

13時 喀血
 受粉する。赤い実を食べたから、血が赤い。内臓の絞り汁。時間を織り、時間を売りに出す。芳香が許可される。許可が芳香する。時間を購入する。幼年時代と少年時代が平行になる。

15時 倒立
 西が挨拶する。南は現実を知る。手のひらから肘に向かって骨の記憶が疾走する。「犯したい」と「犯されたい」が垂直になる。脚に存在が貼り付けられる。夢を浴びる。頭はどこまでも広がってゆき、崖から落ちて海になる。

17時 爆笑
 合格する。手足で吹雪いてみる。声を爆音にまで高めて、煙を固める。人を「穴でできた錯体」と呼ぶ。木を見て森も見る。未来を紛失して、視線をぶら下げる。死んだ爪の腐敗の演技。

18時 夕食
 発芽する。間違え間違う。箸で背中を掻く。比べ比べる。箸で林檎を収穫する。食道を味わう。つかぬことをうかがう。球体だらけの唇へと穴を導く。不意に倒れた仏像から転がり出る耳と耳と耳。

19時 入浴
 衣服が辺からほどかれる。かわりに皮膚が円弧を垂らす。魂に職業を尋ねる。湯気が錯乱して体となり、体が失明して湯となり、湯が傾斜して浴槽となり、浴槽が発病して湯気となる。

20時 激怒
 悟りを開く。仏像を去勢する。大地から血を吸い上げる。体に埋められた声が一斉にひび割れる。脚の林にて自分の脚を見つけ出す。
月の光が響き渡る。突き上げた拳を光に埋めて、冬を分泌する。

22時 就寝
 死んだ爪の蘇生の演技。腹の上を綿が漂う。あらゆる名前に装飾されて、無名の川を切り開く。あらゆる頂点を呑み込み、神経を吐き出す。骨がすべての肉を包み込む。骨は夢のおとずれに白く共鳴する。

26時 仏像
 嘲笑う。禿げあがる。嘲笑う。指の間に沈む軌道を焼く。嘲笑う。闇が固まる場所で反射する。嘲笑う。光が固まる場所で屈折したことを秘す。嘲笑う。文字になり損なう。嘲笑う。清冽に殺される。嘲笑う。



自由詩 スケジュール Copyright 葉leaf 2011-08-02 16:42:13
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