黎明の月
月乃助

夜明け前
蒼い空に
身を削る月がいた
誰にも気づかれることのないように
まして獣たちに さとられないように
目覚めた女が背をみせる
静まり返った山森は、眠りについたまま
星をなくした夜空の寂亡
月ばかりが一人 うなづき返す
誰かに尋ねることが
今あることの答えなら
痩せた月に問うために 黎明の静けさがある
人を感じることもない山間の里に 夜と日を重ねる
遠くで 朝をむごたらしく開け広げる鳥たちの鳴き声がする
夜の雫が眠りつき 光の触媒に
次という日が、否応なしにやってくる
窓の明かりが一つ
それはやがて死斑のように里に
広がる
女は口を閉ざし
なす術もなく
燭光のような明かりに 手をさしのべ心をきめ
復讐する者の形相で
やがてその身を翻した


自由詩 黎明の月 Copyright 月乃助 2011-07-21 14:52:19
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