遠景
宮岡絵美

まっすぐに伸びた楡の根元に座って

視界に収まらない空を見ていた

眼球の限界―

やはり人間は限界のある生きものらしい

銀色の飛行機が頭上高くを過ぎる

遠ざかってゆく機影に憧れを写してみる

遠景として

それは私の感情のなかにある


いつかこの土地に来た

生まれた理由は果てしない筈だった

彼方に連なる山々の影は

ときにさすらうべきことを語っている

広がる大地に根を下ろし

ささやかな日々に生きることも

縺れ合う時は憧れに微かな輪郭を与え

この生の真価を見定める為に

私を問いかける人にする

それがあの日から変わったことだ

敢えて云うならば


彼らは未知に向かっている

多種多様な生の記述に相対するとき

君のcuriosityを抑圧から解放せよ

私のこの身体と頭と心だけで

何処まで往けるだろうか

こうやって日々を歩いてゆけば

いつか其処にたどり着けるような気はしている


時の始まりを見にゆこう

この絶え間なく連なる生物群の連鎖のなかを貫いて

透明な時が立ち上がる

それはたしかな道の始まり

新たな宇宙の加速



(ユリイカ2011年7月号佳作選)

HP:生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける
http://www.eonet.ne.jp/~tobeistodo/
詩「遠景」
http://www.eonet.ne.jp/~tobeistodo/poemenkei.html


自由詩 遠景 Copyright 宮岡絵美 2011-07-10 11:13:06
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