谷川俊太郎
天野茂典
谷川俊太郎さんと酒を飲んだ
谷川さんが酒を飲むとは知らなかった
鶯谷ではない近くの酒場だった
朗読会か出版記念会のかえりだった
何度か同席したことはあったが
話しかけようにもあがって声がでなかった
ぼくはせっせと個人誌を送り
谷川さんは出版したての詩集を送ってくれた
5・6冊はあるだろう
谷川さんの詩は藁のようだと思っている
ぼくにとっては決して老いてはならないのだ
いつまでもわかくいてほしい
酒のせいで谷川さんにおもいきってお酌にいって
天野茂典ですがと名乗ったら
顔をしゃんと向けて『知ってらあな!』
とべらんめえ調でかえされた
酒がとてもうまかった
ぼくがうつ病になったとき谷川さんに手紙を
だしたら おれのまわりにもいっぱいいるから
心配するなと 詩集と手紙がとどけられた
谷川さんは頭の切れる庶民的なデザイナーなのだ
そうしてむこうとこちらの境界なのだ
たんなる国民詩人なんぞじゃけしてない
『台所でぼくは君に話しかけたかった』*
どこかでまた朗読会ができればいい ご健康で
*谷川俊太郎詩集
2004・11・14誕生日の日に