少女でなく女
長押 新



働きもしないのに
飯を食うのは卑しいだろうと
箸を持つことが出来ない
胃袋の中身が空であっても
そこには模倣する
数々の碑が立ち並ぶ
体ごと全部閉じ込めて
おくべきだったと今も念う
覚えていない
覚えてはいないけれど
ポッターと同い年だった頃
let it beを聴きながら
抜け出してきた場所を
奪われていく
先生あなたのことを
模倣しておけば
それはよかったのか
最終電車に揺られ
アルコールの匂いのない人に
縋るように眠ろうとした
いわゆる感傷と
あらゆる感情とが
私の鼻を満たしていく
金でいいから
閉じ込める体だけ
買ってはくれないか
そうして身体を撫でる
その手に噛み付いて
剣呑な退屈さを
歯型として残そうか
心の内ではもっと
もっと牙を剥いているはず
そうやって縋るように
静かに衿を噛んで
ひたすら目を閉じていた
飯を食うのが恐ろしいので
このまま死んでしまったら
どうしようか
誰もが持っている戯言のうちに
このまま死んでしまったら
母が悲しむだろうや




自由詩 少女でなく女 Copyright 長押 新 2011-06-27 13:10:36
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