月夜
……とある蛙
歩いている。
あてもなく歩いている。
すっからかんの着のみ着のままで
歩いている。
足下には星屑が輝き
頭上には異様に大きな月が
幾つものクレーターを見せて
垂れ下がっている。
行き着く先は見えないが
前方山肌は黒く 黒い丘に
一本の灌木と枯れ枝の塊
数羽の梟が
ホウホウとこちらを向いて鳴いている。
ほうほう ホウホウ ほうほうと
頭上垂れ下がる月に向かって
歓声を上げる数人の発狂者
彼らは隊列を乱すこと無く整然と歩いているが、
口々におのれの運命と頭上の月を呪っている。
自分も叫びたいのだが言葉にならず
唸っている唸っている
もう唸り声しか上げられず
しゃれた言葉は霧散した。
今夜も梟の鳴き声ばかりが
叫び声にかき消されること響く
響く