地図に描く空
霜天

いつか来た道を


なぞる度に消えてしまう
机の上のあの地図は
濡れたままでいる
一番と名前のついている街には
今もあなたが
住んでいることになっている

い、ろ、は、で振り分けられている街角は
今も色合いは変わらずに
そこで眠ってしまっている
電車が走っていく下では
川が溢れそうになっている
郵便配達員が困った顔で見上げる坂の上
壊れたバイクが北を指していて
通りすがりの腕時計が
ゆっくりとブレーキをかけながら
停車しようとしている
ここは21番地
大声で確認する誰かの声が
地図から聞こえてくる
その先は、知らない
空白


いつか来た道を
なぞる、なぞる、滲む、滲んで
破れそうになって、やめる


地図の上にも空があって
次第に暮れてしまうけど
地図に明かりがつくはずもなく
仕方なく描きなおしても
地図は濡れたまま
今日も机の上だ


一番と名前のついている街の
21番地のあたり
あなたはまだ、そこに住んでいることになっていて
それより先の道を
知ることもない


自由詩 地図に描く空 Copyright 霜天 2004-11-13 02:48:32
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