空ノ中町は1丁目〜5丁目まで
千月 話子

  地下水脈が耳の下でゴウゴウと鳴り響く夜明け
        なんか起こりそうで


 
境界線に住む「鳥居」さんは
背中がムズムズと 引き裂かれそうに熱くなるのを感じ
家の窓を全部開け放って その時を待っていた


夜勤明けの町の警備員「飛田」さんは
居間に家族全員を集めて 部屋においてある
テーブルや椅子や家具を他の部屋に押し込んで
皆で車座になって しっかりと手を繋いでいる


1丁目の住人は第6感が強いので 急いで
2丁目の住人に 山の上へ集合をかける


3丁目の日野工学博士が 4丁目の発明家である耕作さんと
話し合い 住民に冷静を呼びかけながら
大きなレバーを グイ と引いた


5丁目は新興住宅地で ここに越してきた人達は
本当に良く眠る人達で 就寝する時はいつも
何も置かれていない 重い堅いコンテナで眠るのだ


  ことの始まりは 日も高く上った11時頃 
       大地が踊る 踊る



「鳥居」さんの背中には羽が生えて 遥か天高く飛んで行った

「飛田」さんは家族を居間の絨毯に乗せて空の上をフワフワ浮かび

1丁目の住人は 2丁目の住人が不思議な声で呼んだ
居住区付き巨大航空母艦で 空の上を静かに飛行する

日野工学博士と耕作さんがレバーを思い切り引いた瞬間!
3丁目と4丁目が 土地ごと数十メートル浮かび上がった
3重構造のそれは まるで反発する磁石のように

5丁目の住人は 自分の体を耐久スポンジに包んで
コンテナにしっかり固定して 眠ってしまった


  空中都市ではないけれど  空ノ中町へいらっしゃい 



「鳥居」さんは天使になって 「飛田」さんは魔法使いで
1丁目の住人は超能力者で 2丁目の住人は・・・実は
遥か数億光年の星に住む やたら難しい名前の宇宙人
3丁目の日野工学博士と4丁目の発明家の耕作さんは 前世が
アインシュタインとエジソンらしく IQがすこぶる高い努力家で
5丁目の住人は霊能力者で 幽体離脱が得意技


不動産屋にお願いしたら「何か変わった特技とか体質がありますか?」
というアンケート用紙を差し出しますので 私は殆ど「NO」に○をして
「それじゃ、3丁目か4丁目の物件を御覧下さい。」と言われたの で
なんか申し訳なくて・・・・・・・・・・

      胸に手を当てて   心の中で 
(なんの取り柄もないけれど 日野さんと耕作さんが
元気で頑張れますように 彼等に役立つ住人になる為
努力したいと思います故。 どうか どうか よろしくお願い致します。)
  
      と  言ってみたりしたのです。





自由詩 空ノ中町は1丁目〜5丁目まで Copyright 千月 話子 2004-11-12 17:40:04
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