連禱
salco

世界中の人々の
世界中の一軒一軒の
世界中の恋人達や少年少女や男や女や
老人や赤ん坊達が眠っているような
この街の
この今の
この私の夜中だのに
地球上の大陸と島々
地球上の海洋河川湖沼の
地球上のヲサカナや象やきりんやライオンや
猿や鳥やワニや虫達が眠っているような
この路上の
一隅の
この私の夜中だのに
月や風や花々樹々さえも
星や雲や山や波さえも
テレビやラヂオ、電話や時計さえも
そして明日という日さえも
しんと眠り続けているような夜中だのに
雨は降っている
一連の歌のように
絶え間ないノックのように
一晩中降っている
雨と
私だけが起きている
日付の無いカレンダーのように
暗闇の中で途方に暮れている
悲しむように
懐かしむように
或いは儚い喜びをそっと抱く死体のように
声の無い思い出と共に
顔の無い想いと共に
名前の無い感情と共に
今夜
この今の
この真夜中に
雨と私だけが目を覚ましている


自由詩 連禱 Copyright salco 2011-06-13 23:02:57
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