漂泊のひと
恋月 ぴの

気のせいなら良いのだけど
こころなしか自分勝手なひと増えたような

今朝もわたしの背中を押し退けていった若い女性
謝るでもなく当然な顔してたっけ

あの日からなのかな

誰もが涙して
誰もが優しくなったはずなのにね

あと半歩で助かるとしたら
ひとを押し退けてでも助かろうとする本能に抗えないだろうし

やっぱ自分がいちばん大切だったりする

食堂のテーブルにみつけた小さな傷
もしかして、これもあの日についてしまったのかな

でもそれは、遠い昔についた古傷であることを思い出して
すべてをあの日のせいにしたがる自分自身に気付く

だからって誰でも神さまって訳じゃないしさ

表面張力で吸い寄せられるように
わたしのこころは好きになったひとの二の腕に寄り添って

孕めるものなら孕みたい

それがわたしの生きている証ならば

梅雨の合間の晴れた空

吹き抜ける夏の風に仕舞い忘れの冬物をさらす











自由詩 漂泊のひと Copyright 恋月 ぴの 2011-06-13 19:05:37
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