夕暮れの戦慄
シホ.N
わたしは生来みなし児であったので
血縁のおそろしさを知らない
また血の繋がりの
ありがたさも知らない
血の糸がもつれからみあい
愛憎きわまる悲喜劇に
みなし児らは失笑するのだ
ああでもほんとうのところ
その糸の一本でも
わたしにあったなら!
わたしにそれがないのみならず
近ごろの
自らの生活の不誠実のために
知人たちとの糸さえ切れていく
血で繋がるわけではない繋がりさえ
わたしの手から失われる
血の糸なら切れないものか
わたしは生来 みなし児であったか・・・
明るいうちからの酒に酔って醒めて
夕暮れになった
ぼんやりとなって
本当に独りなのだという
実感のようなものが頭をもたげたとき
しんと戦慄して
覚めざめとした