夕暮れの戦慄
シホ.N


わたしは生来みなし児であったので
血縁のおそろしさを知らない
また血の繋がりの
ありがたさも知らない
血の糸がもつれからみあい
愛憎きわまる悲喜劇に
みなし児らは失笑するのだ

ああでもほんとうのところ
その糸の一本でも
わたしにあったなら!
わたしにそれがないのみならず
近ごろの
自らの生活の不誠実のために
知人たちとの糸さえ切れていく
血で繋がるわけではない繋がりさえ
わたしの手から失われる

血の糸なら切れないものか
わたしは生来 みなし児であったか・・・

明るいうちからの酒に酔って醒めて
夕暮れになった
ぼんやりとなって
本当に独りなのだという
実感のようなものが頭をもたげたとき
しんと戦慄して
覚めざめとした


自由詩 夕暮れの戦慄 Copyright シホ.N 2011-06-12 23:55:19
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