波のあとに
木立 悟






音を持たずに水を切り
物語を捨てる
死神に無視され
今日を今日に置く


悲しみは増し
枠は増さず
光は増して
片目を覆う


朝は白に 朝は茶に
まばたきをまばたきにただぬぐう
頬と粉 いつか
まぶしい日は終わり


花が花を抑える庭の
小さな足跡のための径
空へ 空へ
吹きつづける色


ざわめきが 暗がりが
青に触れ
はじけ
低い低い通りを歩む


身を乗り出し
未来を見る
誰も息をしない
緑の目の行先


冬の鳥が常に胸に居て
何もせずただ冬で居る
そしられても むしられても
そのままで居る


水面を削ぎ
仮面をつくり
かぶり ながし くりかえす
誰も居ぬ森 くりかえす


白と黒の虹
ひとつかみの冬
波は来ない 波は来ないとふれまわる
夜の道に立つうしろすがた


言葉と花
背に背にほころび
青と青と青の揺れ
霧の午後 霧の朝を去る


まわりつづける文字と息
音は金と緑をわたり
波を下に 下に見る
ゆうるりと落ち 上に見る


指を離れ 置くように置き
冷たさはすぎ
やがてくぐり
海は海の奥へと戻る


失くしたものは 常に在るもの
響きふちどり 響きつづけて
夜のひとつの指に降る粒
起点と終点を結ぶ虹を見る

























自由詩 波のあとに Copyright 木立 悟 2011-06-08 01:39:18
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