杖刑
salco

閑散の通行人に
血染めのおっちゃんは
鮮血はラズベリージュースほどの
出来過ぎの綺麗と知らしめる白ジャージで
泥酔した禿げ頭の小さな切り創から
ぼたぼたとアスファルトに零れる
動脈血の量は驚くべきものだと宣伝しつつ
新世界の路地を弾かれて進む

ロン毛のオダギリ風貌によく似合う
かったりい苛立ちと嗜虐の喜色を倦んだ黒服に
背中をど突かれ、ど突かれして
坂田師匠歩きの緩慢な蛇行の先
踏み倒しのツケを払わされるのは多分
あの角向こうの交番ではなく
どこか暗がりのどんづまり

よろめく身体は
水に膨れたゴム風船のようで
転ぶとぐしゃっと音を立て
奈落に慣れ切った生が
いつ破れようと構わぬようで
血が目に入る怪訝に歩を止めては
そのたび後ろを弾かれ闇に曳かれ
今日の刑場へ


自由詩 杖刑 Copyright salco 2011-06-06 22:07:35
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