匙な相棒
電灯虫

スプーンのお腹は 唇の熱を一瞬奪う。
離して写れば 魚眼レンズなお米顔
花柄の柄を掴んで 口に入れちゃう。


スプーンはテレビと違って
私を これ以上小さくすることはできない。
小さくなると 大変な目に遭いそうだし
いらないもん
大人な私は 人差し指でクルッと回す。


今度は中指で 
シーソーみたいに危うく揺れて
行ったり来たりで 私を揺らす。
中心点は きっとある。
気持ちを裂く事情の中
細身の柄に 私を託す。


平らなプリンの表面に
窪みの分だけ 傷をつける。
私の傷跡は 
遠くのリビングからもなんとか見える。
結構 危険で意外な一面。
でも
罪悪感は 甘さに負けました。
奥深くにあって 
黒くて とろり 
よりよい甘さを取り出して
ぺろっと いただき。
口に頬張ったまま
頬と一緒に スプーンが跳ねる。


自由詩 匙な相棒 Copyright 電灯虫 2011-05-31 15:38:26
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