ハネの折れた扇風機が雨にぬれいた
蒼木りん

台風がいった空は
洗濯したての青空が
それだけで
私は幸福なのに

昨日の夜は
生き物の声のしない
しん とした夜で

それさえ気づかない
あなたは
男という生き物で


私に
あなたを救うことは
できないのに


見た夢をおもいだした

試験を受けに行くのに
必要な書類が見つからない
時間はせまっているのに

現実の私にはありえない
そんな不備
そんなあせり


あなたは苦しむ自分を
見てもらいたいだけ
私が苦しむ顔であなたを見るまで

なんどでも

冷めたい機械が
私であるなら
あなたは生温かいけだもの


玄関に
何も言わず
骨の折れた傘がたたまれていて

物にも心があるんですよ
という私が
心なんだ

ハネの折れた扇風機が雨にぬれいた

あなたの母が使っていた扇風機
ハネをとりかえて
まだ使うと言っていたのに


あなたに
私を救うことは
永遠にできないのに


晴れたら
こころが重くなり
曇れば
ため息をつく

雨風が吹けば
厄介だと思い

それでもだまって
生きていく










自由詩 ハネの折れた扇風機が雨にぬれいた Copyright 蒼木りん 2011-05-31 11:08:10
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