雨 雨 フレフレ
nonya


なんでもない休日の
中間点からおよそ50歩ほど
家に近づいたあたりで
やっぱり雨は降り出した

ありきたりの舗道を
無邪気に塗り潰していく雨粒
いつだって間が悪い僕は
もちろん傘など持っていない

濡らしてはいけないものなんて
何もなかったけれど
背中の強迫観念を動力にして
僕は自分を走らせていた

完璧な悲劇のシナリオがなければ
傘もささずに雨の中は歩けない
いつだって間が悪い僕だけど
さすがにそれくらいは知っている

前髪から滴る雫には
たぶん僕が何%か含まれている
水溶性の僕は水にはめっぽう弱いけど
少しずつしか溶けないからタチが悪い

雨 雨 フレフレ
かあさんは
死んじゃったから迎えには来ない

雨 雨 フレフレ
せめて小指だけでも溶けてなくなれば
途方もない約束をしなくてすむのに

最後の坂道を
歩く速度で駆け上がる

溶けた僕が
坂の下の排水溝に流れ着く頃
溶け残った僕は
溶けかかった声で
ただいま と言いながら
決して溶けてはくれない日常の
ドアを開けるのだろう




自由詩 雨 雨 フレフレ Copyright nonya 2011-05-29 00:02:26
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