友人
salco

年賀状だけのやり取りが十九年
余震が続く四月にイレギュラーで
安否を尋ねる手紙をもらってから
毎日メールで話すようになった
なんて
私もババアになったもんだよね
文脈には生活の蓄積を窺わせつつ
互いの画像に
「ちっとも変わってないね!」
なんて
見えすいたオドロキ交換し合って
私達もババアになったもんだよねー

プライムだった
毎日着飾って
色んなヒールの靴履いてさ
仕事が遊びみたいに楽しくて
ディスプレイだけはプライドが暗闘したけど
腹筋と顎が痛くなるほど笑ってた
今日はこっち
今度はあっちと食べ歩いては
毎晩のように一緒に帰ったね
時には終電逃がしてタクシーで

海外旅行もした
それぞれ彼はいたけど
目立ちたがり屋のおミズでも
元ミスコンのついでにモテて
でもKちゃんお堅いから
こっちは遊べなくてさ
眠れず三時過ぎまでザッピングしてた
退屈CNN、誰なのトークショー
映画でよくあるモノクロ映画
恨みがましく
熟睡中に副流煙たっぷり吸わせてごめんね

それからKちゃんは
その彼と婚約してトレーンを曳き
ビミョーなアップリケ割烹着を
お姑から支給攻めされる奥さんになり
片田舎で二十余年の暮らしを重ね
料理上手で集落のヨッシャお任せ中堅どころ
布団かぶって泣く日もあったよね
あれから私は別れて、新しいの作って
母を亡くし
Kちゃんはお父様を亡くして

職場の出来事やお肌の悩みは話しても
家庭の事情やダンナについては言わない
相も変わらずふらふら自堕落と
自業自得を行き来するのを私も明かさない
でも二十八日に大きな地震があるらしい
なんて
ガセ鵜呑みで伝えて来るとこ
あんたちっとも変わってないよね〜


自由詩 友人 Copyright salco 2011-05-28 19:24:46
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