歌うな
清貴



鎮魂のうたなど
私たちはうたうな
やわらかな慰めなど

うたうな


白い光と焼き魚と
熱い味噌汁をならべながら
テレビを見て
悲しみを放るな


悲しみよりも
辛さよりも
その のんびりとした思いよりも
あなたの 手が
あなたの 足が
必要なのが わからないのか



鎮魂のうたなど
あとにしておけ

海のとどろきに そんなひ弱なうたなどかないはしない



私たちがともすのは
鎮魂のためのかすかなろうそくではなくて

魚を焼くための
垢を落とす湯のための
明日の朝のための
たいまつではないのか


私たちが
対岸の海に
投げるべきなのは。






自由詩 歌うな Copyright 清貴 2011-05-28 01:03:49
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