目が回る
乱太郎


月を飲み込んだ男がいた
そいつの腹は
まるまると膨らみ
あたかも臨月のようだった

太陽を抱きかかえた女がいた
激しい炎に
なんて温かいのだろう
と涼しい顔で言った

星を舐めている男の子がいた
甘くない
おいしくない
唾を夜空に飛ばすと
それに願いを掛けた女の子がいた

地球にへばりついた老婆がいた
どうしたのかと尋ねると
もう先は長くない
土に還るのだ
こころの準備をしておるところじゃ と


そんな人間たちを尻目に
月も太陽も星も地球も
くるくる回っている
先に倒れるのはどっちだ と
言わんばかりに


自由詩 目が回る Copyright 乱太郎 2011-05-26 17:11:26
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