キッチンでバックから
はだいろ


本棚を、好きな本だけで、
埋めてしまえば、
ぼくとゆう人間が、それで、
できあがるといい。
ところが、
彼女の家には、本どころか、
雑誌すら、一冊もない。
安っぽい家具、
ピンクのマット。
どうゆうひとなのか、
さっぱり、わからない。

いっしょに、
ぼくの好きな劇団の、お芝居に連れてゆく。
(イキウメ「散歩する侵略者」
三軒茶屋シアタートラムにて上演中。)
ぼくはもう、
胸をうたれて、つぶれそうに泣き出しそうだったけれど、
彼女には、たいした感想もなく、
聞き出しようもない。
きっと、退屈ではないくらいのことで、
意味も考えるちからがないのだ。

でも、
だから、どうというわけでもない。
たとえば猫は、本なんて読まないし、
演劇なんて必要としないし、
それでも十分気高く、
十分しあわせそうだし。
どうして、
しあわせになりたくて悩むにんげんが、
本を読まなければならないのか、
これはわからない、
ぜんぜんわからない、
ひとはわからないひとばかりだ。

パンツを脱がして、
洗い物をしようとするところを、
後ろから、
おっぱいをつかむと、
彼女があ〜んと目をつむるから、
ぼくもパンツをおろして、
ぴかぴかのキッチンで、
バックから入れたり抜いたりした。
こんなことを、してもいいのが、
彼女というものなんだろうか。
彼女に猫の耳や、
猫のしっぽをつければ、
ぼくにも理解できる出来事だったのかもしれない。

イキウメのお芝居のように、
まるで、
宇宙人に、いちばんたいせつな概念を奪われた、
人間のように、
ぼくには、
彼女のことが、
好きだとか、
愛しているとか、そうゆう感情は、
まったくない。
いや、感情がないのではなく、
そうゆう概念を、失ってしまったようだ。
抱く。
うしろから突く。
おしりに出す。
いちばんたいせつな、
概念はないままで。


なんだか、死んで、
宇宙に帰りたい。






自由詩 キッチンでバックから Copyright はだいろ 2011-05-23 20:00:41
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